伝えたいこと

2025/3/25 東大病院が移植医を増強

東大病院 移植医を増強
25年度8人採用 人材育成

脳死者からの臓器を移植する施設が、人員や病床の不足などを理由に臓器の受け入れを断念している問題を巡り、手術実績で国内トップの東京大病院が2025年度、移植専門の外科医ら8人を採用する方針であることがわかった。指導者として移植に携わる人材を育成し、日本の移植医療の底上げを図りたい考えだ。

手術室や集中治療室整備

同病院は、移植医療で実績のある外科、内科、麻酔科、集中治療の医師計8人を採用。チームで心臓と肺、肝臓の移植手術を担う。同時に、移植手術の経験を積む希望を持ち全国から集まる医師の指導にあたる。採用にかかる費用は、同病院の男性患者(68)からの寄付金5億円を充て、移植専門の講座も開設する。開設期限は27年度末だが、追加の寄付などで予算が確保できれば、延長を検討する。このほか、▽移植優先の手術室の整備▽移植手術の前後に患者が入る集中治療室の整備(3床程度)▽移植手術を補佐する臨床工学技士や臨床検査技師の採用▽移植後の患者の健康状態を把握するシステムの開発―なども予定している。同病院で、脳死者から提供された臓器の移植手術は、23年が心臓、肺、肝臓で計88件、24年は計100件となった。いずれも全国最多だが、移植を希望する患者は24年12月時点で515人が待機している。一方、移植手術は外科医などが一般診療と両立しながら実施している。臓器提供の打診があっても、医師ら人員や病床などのやりくりがつかず、23年は3臓器で36件、24年もほぼ同じ水準で移植手術を見送った。同病院の23年度の収支は11,8億円の赤字で、移植医療も含め、増員や増床の余裕はないという。講座の開設を担当する佐藤雅昭教授(呼吸器外科)は、「移植に携わる医師の育成は大きな課題だ。人材育成の『東大モデル』を築きたい」と話している。

移植医療底上げ図る 東大病院寄付で実現
 地方波及へ国の支援期待

東京大病院は、移植の経験を積むことを希望する医師を全国から受け入れ、育成する。育った人材が各地域で移植を担うようになることで、日本の移植医療全体が大きく前進する可能性がある。
東大のように多くの移植希望者を抱える施設は、臓器の受け入れ要請の集中で、移植を担う医師やスタッフや手術室のやりくりが追いつかず、提供された臓器の受け入れを断念している事実が明らかになった。
実態解明を求める声が国会などから上がり、厚生労働省は2023年に全国26施設で、のべ803人の患者の移植手術が見送られていたとする調査結果を公表した。
厚労省は昨年12月、1997年の臓器移植法施行以来初となる移植医療体制の改革方針を決定した。臓器あっせん機関の分割を打ち出したほか、移植施設が臓器受け入れを断念しても別の施設で移植を受けられるよう、移植を希望する患者が登録する施設を従来の1か所から複数にした。だが、移植施設の人員や設備を強化するものではなかった。
移植医療は、手厚いスタッフの配置や休日・夜間を含めた手術室の稼働でコストがかかる。
東大の試算では、患者の入院が長引くと肺移植で1件当たり400万円近い赤字になることもあるという。そうした中で心臓移植を行う施設として、新たに愛媛大が昨年参入し、東京科学大や岡山大も来年以降の実施に向けて準備を進めている。
 こうした施設では、移植の高度な知識と豊富な経験を有する医師や看護師などの確保や人工心肺などの機材が配置された手術室の整備のため、多額の費用を要する。
 今回の東大の移植専門医の一括採用などの体制強化は、患者からの寄付金で可能になった。寄付をした患者の男性は、肺の難病を患い、東大病院で生体肺移植の手術を受けた。新聞報道などで東大などが移植手術を見送っている実情を知り、寄付を決意した。男性は「東大が日本の移植医療の中心となって人材を育成し、地方にも波及してほしい」と話す。
 思いがけない巨額の寄付金を得た東大のように、他の移植施設が単独で体制を強化するのは難しい。ようやく増えてきた臓器提供を着実に移植につなぐため、診療報酬を手厚くするなど国が後押しする時期にきている。

2025/2/25 コンビニエンスストアにチラシを置いていただきました

神奈川県の某コンビニエンスストアから大変ありがたいご連絡をいただきました。

店内のチラシ・パンフレット置場に私どものNPOのチラシを置いていただけるとのこと。

さっそくお送りさせていただきました。

本部さんとの関係もありどこのコンビニかは公表できませんが、多くの方の手に取っていただける

きっかけをいただきました。店長のOさん、誠にありがとうございました。

2024/11/1 脳死と植物状態の違い

〔脳死と植物状態の違い〕

脳は大脳・小脳・脳幹に大別されます。脳死とは、これらすべての脳の機能が失われた状態のことで、いずれ必ず心臓も停止し脳は融解します。どんな治療をしても決して回復することはありません。
一方で、植物状態とは、脳の中の脳幹と呼ばれる部分が働いています。脳幹では呼吸や循環機能の調節・意識の伝達など生きていくために不可欠な働きが行われているので、治療を続けることによって回復する可能性が残されています。

〔なぜ臓器移植では脳死が注目されるの?〕

移植医療という、この半世紀で世界中に広まった画期的な医療によって、死に直面していたたくさんの重症患者(レシピエント)が、健康を取り戻せるようになりました。とはいえ、体の中のどんな臓器でも移植ができる訳ではありません。
脳死下で提供できる臓器は、心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球の7つですが、心臓停止後では、腎臓・膵臓・眼球の3つのみです。
提供できる臓器数に違いがあるのは、血流が止まった状況から移植後に血流を再開して機能を発揮できる能力の違いによります。脳死下で提供された場合、ドナーから臓器を摘出して血流再開までに許される時間は、心臓で4時間、肺で8時間、肝臓・小腸で12時間、腎臓・膵臓で24時間と言われています。

 

2023年6月23日(金) 俎上に上げたいこと-2 「臓器移植という起死回生医療の認知度がとても低い」

前回(1-A)の話は、「肝臓」に関して私たち夫婦が実体験したことですが、「腎臓」という臓器になると、話がもっとややこしくなります。何故、ややこしくなるかと言えば…
腎臓という臓器だけは、臓器不全に陥っても、生き延びる治療方法があるからです。それが「人工透析」といわれる、腎不全患者を救う優れた医療です。
本来ならば、(移植可能な臓器の場合)臓器不全に陥った患者の取り得る道は、「移植手術による再生」か「間もなくの命の終わり」かの、厳しい2択になります。ですが、そんな2択の状態になっても、前述したように、医師の側から移植の道を示すことは殆どありません。
一方で、腎不全患者に限っては、唯一例外的に、「移植手術による再生」か「人工透析医療」か
「間もなくの命の終わり」かの、3択になります。
しかも、移植の道を選択した時に行われる「腎移植手術」のレベルも、
透析の道を選択した時に行われる「人工透析医療」のレベルも、
どちらも日本ではトップレベルと言われる、恵まれた医療環境が整えられています。

問題なのは、意図的とも思えるほど(双璧である筈の片方の)腎移植手術による再生方法が、語られない点です。
医療従事者であれば、「患者にとってより健康な生き方が出来るのはどちらか」は、容易に分かっている筈です。
ところが、本来ならば、移植の道と人工透析の道とが、生き延びる道として、
並列的に説明されるべきなのに、現実には、泌尿器科(或は腎臓内科)の医師から
腎不全間近の患者に行われている説明は、人工透析オンリーであることが殆どで、
実態は、人工透析への誘導に他なりません。この「透析オンリーへの誘導」が、
日本においてのみ、長年にわたり続いてきた結果、「腎臓が悪くなったら人工透析」という流れが、
世間に流布し、今では当たり前のこととして、定着してしまいました。

世界に目を向けると、「腎臓が機能しなくなったらまず、移植を考える」というように、
移植の道を優先します。選択肢が2つあるにも関わらず(しかも、移植の道の方が、
はるかに、患者や患者家族にとって有益であるにも関わらず)それを示さずに、
患者を人工透析にのみ、当然のように送り込むという、日本国内の多くの泌尿器科医の
旧態依然とした安直な姿勢は、「患者の知る権利」もっと厳しい言い方をするなら
「患者の生き延びる権利」の侵害とも言えます。

どちらを選択するかは、患者が決めることなのに、選択するチャンスすら与えられないという現状は、歪んでいます。
『選択肢が与えられた上で、患者自身が人工透析を望む』ということと、
『医者に言われるままに、人工透析を始め、それを生涯続ける』こととは、
似て非なるもの、全く様相が異なります。

2023年6月20日(火) 俎上に上げたいこと-1 「臓器移植という起死回生医療の認知度がとても低い」

ドナー登録を推進する為に考えなければならない問題は、山積していますが
、初めの一歩として、まず問題視したいのが「臓器移植の認知度の低さ」です。
移植可能な臓器は、心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・(そして眼球)だと言われていますが、
ここで、問題点を分かりやすく伝える為に、私たち夫婦の実体験をお伝えします。

私たち夫婦は、当初、生体肝移植手術のレシピエントとドナーになり、その一年半後に今度は、
生体腎移植手術のレシピエントとドナーになりました。二度の臓器移植手術を経て、
現在は二人とも健康的な日常生活を送っています。
ところが、「移植という画期的な治療方法がある」事は、(現在に至るも)予想以上に、世間には知られていません。
かく言う私も、夫が重度の肝硬変だと判明した時に、「いざとなったら自分がドナーになって、
肝臓の一部を夫に移植してもらえば夫の命が助かる」と思えたのは、わずかな移植情報があったからです。
そのわずかな移植情報とは…

政治家の河野太郎さんが、2002年にドナーになって、父親の河野洋平さんに自分の肝臓を提供し、
父親の洋平さんは、移植された太郎さんの肝臓によって健康を取り戻した、というニュースでした。
(ちなみに、2002年頃は、肝移植手術にとっての黎明期で、脳死からの肝臓提供による肝移植例は、
未だ20件程度しかなく、肝移植手術への保険適応は、翌々年の2004年に始まりました。)
その後、太郎さんは政治家として激務をこなし、父親の洋平さんは穏やかな日々を送っている、
という映像が流れていたことがありました。そうした一連のニュースが、肝移植手術に繋がったのです。
裏返せば、このニュースを見知っていなかったら、夫を救うことが出来なかったかもしれません。

「主治医から、移植手術という劇的に改善する方法があるという、情報提供はないのか」と、思う方がいるかもしれませんね。
ですが実際には、どの医師からも、移植情報の提供は一切ありませんでした。
それどころか、いよいよ病状が重篤化し、「いつ肝不全で亡くなってもおかしくない状態」だと告げられた時に、
条件反射的に「私がドナーになりますから、移植して頂けませんか」と自らドナーを志願したら、
「えっ!?ドナーになる意思があるのですか」と、驚かれた位です。
「医師でさえも驚くほど珍しいことなのか」と、とても意外だったので、このリアクションはよく覚えています。
このやり取りは、今から8年前の2014年のことですから、状況は少しは、改善しているかもしれません。

「生き延びるためには、肝移植手術しかありません」と、説明してくれる医師も、徐々に増えているようです。
ですが、日本全体で見れば、未だ極少数派です。患者家族が自ら手を上げ、強く希望しなければ、
移植の道さえ見えない(知らない)ままで終わる、
という状況が、現在(2022年)でも続いています。